昭和レトロ見納め「焼き鳥のいせや公園店」が建て替えへ
吉祥寺駅南口、丸井の脇をぬけた井の頭公園の入り口近くにあるのが焼き鳥の「いせや公園店」。昼近くなると、前の通りにもくもくと焼き鳥を焼く煙がたちこめる。
店内は早々の一杯でくつろぐサラリーマンもちらほら。公園に遊びに来たファミリー、ご近所の主婦が焼き鳥をテイクアウトする姿や、おやつ代わりに1本ほおばる子どもの姿も見られる。
吉祥寺の名物ともいえるこの人気店だが、ついに7月8日の営業で一旦閉店することになった。老朽化が進んでおり、昨年の東日本大震災で壁に亀裂ができたことや、隣接の七井橋通りの拡張計画もあり、建て直しが決定。隣のアイスクリーム店「ドナテロウズ」はすでに閉店している。
「いせや」は1928(昭和3)年の創業で当初は精肉店。58年に立ち飲みを中心とした焼き鳥屋に衣替えした。安くてうまいと評判を呼び、60年4月「総本店」(同市御殿山1丁目)に続きここ、「公園店」がオープンした。
1階はカウンター、2階は大宴会も可能な座敷の木造2階建て。間口2間ほどの小さな店内は増築を重ね、約300余席となっている。消費税が導入された89年から価格据え置きの焼き鳥は1本80円。大衆的なこの店を愛するアーティストや文化人も多く、ホッピー片手に熱く議論をする人たちがいれば、カウンターの隣の席でミュージシャンの高田渡さんが飲んでいた、ということもあった。
2006年に建て替えのため閉店した「総本店」と同様、吉祥寺の名物ともいえるこの店の建て替えには惜しむ声も多いが、1年後に完成予定の新店舗は地下1階地上2階建て、面影は残しつつ、公園側がガラス張りの店となる計画。建設中は吉祥寺駅北口側の仮店舗で8月から営業が開始される予定だ。
この店の思い出に浸る人や、体験したことのない昭和に触れようとする人々で、週末などは行列ができている。それぞれの昭和がまた一つ消えようとしている。
株式会社いせや総本店「公園店」
住所:武蔵野市吉祥寺南町1-15-8
電話:0422-43-2806
営業時間:12:00-22:00
定休日:月曜日